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2014/11/12

わたしを語る(7)マスコミとのほどよい距離

前回までのお話は「わたしを語る(1)」からご覧ください!



ファムツアーでお面をかぶる参加者たち


前回書いたように、観光局の活動目的は観光地のことを知ってもらい、行ってもらい、お金を落としてもらうことです。

観光地を知ってもらい行ってみたいと思ってもらうために、マスコミの存在は欠かせません。メディアへの露出を増やして(英語ではeye ballといいます)、より多くの人に関心をもってもらい、行ってもらい、最終的にお金を落としてもらうのが狙いです。

伝統的なマスコミにはTV、新聞、雑誌などがあります。マスコミ向けの広報・マーケティング活動には、プレスリリース(ニュース資料)の配信、観光セミナーや記者会見、取材対応、広告、パブリシティ、ファムツアー、番組制作への協力などがあります。

最近ではネットで情報を得る層が多くなってきたことと、従来の広告よりも口コミに頼る傾向が多くなったのでソーシャルメディアも重要な役割を担っています。





どのマスコミを使うのが効果的かという点についても考えました。発行部数の多い媒体はその分広告は高くなります。またどんなに発行部数の多い媒体でもターゲットが見ていない媒体では意味がありません。

ターゲットが日頃どんな媒体を見ているのかを知ったうえで選択する必要があります。そして、どの媒体のどんな方法で、どんな切り口で露出していくのかを考えます。

一緒に仕事をしていた方から「マスコミとはいい距離を保った関係を築くとよい」とアドバイスされたことがあります。マスコミは諸刃の剣、いいことを書いてくれることもあれば、マイナスなことを書かれてしまうこともある、だから注意が必要だという意味です。

ちなみにアメリカでPublic Relations (PR)というと、宣伝の意味があると同様に、マイナスの事件や事故が起こったときへのマスコミの対応についても含まれます。(アメリカで学びました)

とはいえ、マスコミ業界にも公私を超えたお付き合いができる頭の切れる先輩たちができたことは、このお仕事をしていてよかったと思えることのひとつです。





仕事内容について取材を受けた記事

マスコミとのお仕事が増えるに従い、仕事のことだけでなく自分のことについて聞かれることも多くなりました。

自分をきっかけに観光地について知ってもらえるのもいいことだと思い、進んで表に出るようにしていました。

わたしを語る(6)観光局は営業する?

これまでのお話はわたしを語る(1)からご覧ください♪


観光博覧会で旅行会社さんと打合せ



ところで観光局の存在意義とはなんでしょう?どんなお仕事をしているんでしょう?

消費者の目線でいうと、観光情報を提供しているところというイメージがあると思います。観光局の役割は主に観光地のことを知ってもらい、行ってもらい、お金を落としてもらうことを目的に活動しています。


活動の対象はざっくり言うと①旅行業界関係者、②マスコミ関係者、③一般消費者、④行政です。





まず①旅行業界関係者というと旅行会社が思い浮かびます。旅行会社は旅行のプロで、あらゆる観光地について浅く広く知識をお持ちです。

旅行会社は収益を上げることを目的に活動しているので「売れる旅行」を常に考えています。

そこでわたしは旅行会社の企画担当者の方たちに、新しい観光地について説明したり、効率がよく、お客さんが食いつきそうなツアー日程を提案して観光商品を作ってもらう営業活動をしていました。

G観光局は100%公の機関でしたが、無名の観光地。政府観光局のように業界の方が連絡してきたり尋ねて来てくれることは、よっぽどの用事がない限りありません。それで一般企業のように営業をかけて売り込みに行っていました。


旅行会社とひとことに言っても、実際に販売している商品はそれぞれです。パッケージツアーを企画・販売している部署もあれば、団体旅行(社員旅行、修学旅行、優秀社員のインセンティブ旅行など)を手配・販売している部署もあります。

パッケージツアーでも2040代が2人で参加するタイプのものや、5060代の人が集まってバス1台で動くタイプのものもあります。各旅行会社が強みを持つタイプの旅があります。

観光素材がどのターゲット層に受け、どの旅行会社が企画・販売を得意とするのかを把握したうえで、目的に合う旅行会社にターゲットを絞って営業PR活動をする必要があります。

日本のG観光局ができるまでは、本国の人たちはとにかく大手の旅行会社1~2社を相手に働きかけていた様子でした。確かに大手は取り扱いの旅行は多いのですが、やはり得意分野というのがあります。

わたしはGの取り扱っていた観光素材が若者というよりは団塊世代に受けるだろうと感じ、年配層の団体パッケージツアーを得意とする旅行会社に売り込みをかけました。母親がヨーロッパ旅行で使っていた旅行会社です。

結果、企画担当者の方にも採用していただき、観光地や名物料理をたっぷり楽しむパッケージ商品ができ、お客様の集客も順調に進めることができました。



ランドオペレーター懇談会



ちなみに旅行業界には、旅行会社(エージェント)以外にもランドオペレーター(ランド)、キャリアがあります。

ランドオペレーター(ランド)は、主に海外旅行で、宿や観光地、現地の交通手段など往復航空機以外の「地上手配」を専門に行う会社のことです(JTB総合研究所)。つまり旅行会社A社のツアーに参加しても、渡航先の足・飯・枕の手配はランドオペレーターB社が行います。

キャリア(carrier)は航空会社や船会社などを指します。


旅行業界関係者(エージェント、ランド、キャリア)向けに行う活動の一つに観光セミナーがあります。関係者を一堂に集めて観光素材を紹介します。

中には本国からお偉いさんが来て大きなバンケットを催すこともありますが、わたしは企画担当者を集めた小規模なセミナーも行うのが好きでした。

最後に旅行業界向けの広報・マーケティング活動の評価について書きます。旅行業界への働きかけのあと、フォローアップも重要です。広報・マーケティング活動の結果、商品化してもらえそうなのかといったことを聞き出し、次につながる必要があります。

営業活動の結果、どの程度のパッケージ商品や団体旅行が発生したか、その結果どのくらいの訪問者が訪れたのかを知ることで活動の結果を評価することができます。





観光セミナー

Lesson learned: 仕事の存在意義を常に確認し、結果の出やすいベストな方法を模索する

わたしを語る(5)イメージとターゲット

これまでのお話はわたしを語る(1)からご覧ください♪


ロケ地となったスキー場の観光ポスター


無名の観光地Gの観光局を立ち上げて半年が経ったころ、ドラマ「冬のソナタ」のNHK衛星放送をきっかけに、ロケ地についてのお問い合わせをいただくようになりました。

事務所を立ち上げて2年後にはNHK地上放送で冬のソナタが始まり、韓流ブームにいっそう火がつきました。冬のソナタ以外の韓流ドラマもあちこちで放送が始まりました。

ドのつく田舎だけれど、自然が多くリゾート地としても知られる土地柄ゆえ、冬のソナタ以外のドラマや映画のロケ地も点在していることがわかりました。



ドラマロケ地マップを作成・PR


ドラマの俳優さんからのロケ地へのメッセージ

 ドラマがらみのPRで学んだことは著作権についてでした。俳優さんの写真を勝手に使うことはできません。

本国では非営利の観光誘致の目的で使用することを条件に、ドラマの俳優さんの写真を使う許可を特別にもらい、ロケ地マップを製作してもらいPRをしました。これはお役所だからできたことでした。

ちなみにこれらのパンフレットやポスターは一時期、ネットオークションで売られるほどに人気が出ました。


海のそばを走る「海列車」



韓流ブームの流れに乗り「冬のソナタでおなじみのあの場所」という純粋でロマンチックなイメージをつくりあげることに成功しました。これをきっかけに大都市観光と差別化を図るために、一味違った体験型観光にさらに力を入れていきました。


秋の松茸祭り・松茸狩り体験


具体的には松茸狩り体験、キムチ漬け体験、登山、地方の伝統祭り、無農薬の野菜や山菜を使った韓国料理教室、わかさぎ釣り、伝統市場を巡ったり、地方列車に乗る旅など。都会のショッピング・エステなどとは全く違う観光です。

団体旅行やイベントにも力を入れました。日韓の先生同士の交流、農業視察、工場見学(焼酎工場、キムチ工場など)、マラソン大会、トレッキング大会などです。 

修学旅行では都市部では比較的困難なホームスティやファームスティ、学校交流なども積極的に斡旋していきました。

日本の高校生たちがスキー修学旅行に毎年訪れるようになりました。言葉の通じない外国でホテルに缶詰になるので先生たちには管理面で楽なのだそうです。




Lesson Learned: ターゲットは絞ること。存在する観光地を全体に向けてPRするのではなく、特定のターゲットが興味をもつ内容にイメージをつくり広報する。